院長あいさつ
2020年(令和2年)1月20日に横浜港を出港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客で, 1月25日に香港で下船した80代男性が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していたことが2月1日確認されました。2月2日に香港から同報告を受けた厚生労働省は, 2月1日那覇港寄港時に検疫を受けたダイアモンド・プリンセス号の船員や乗客に対し, 2月3日に再度横浜港で検疫を実施、その結果、乗客等から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が検出されました。わが国での新型コロナウイルス感染症との戦いの始まりを告げた事件でした。
それから現在の第8波に至るまで3年が経過し、政府は、今年の5月8日に新型コロナウイルス感染症を感染症法「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類相当」に移行する方針を固めました。この間、いたる所でクラスター(集団感染)が発生し、病院も例外ではありませんでした。とりわけ精神科病院では、認知症や重篤な精神の障害のために、ご本人の病床や所定の感染症エリアで安静を保つことのできない方もおられ、瞬く間に感染が拡大しました。
当院も第7波、第8波の感染拡大時にクラスター発生を経験しました。その際、精神科病院から呼吸管理や全身管理のできる総合病院へ転院できたのはほんの少数でした。自ら感染するリスクがありながら、入院患者さんの生命を守るために、必死で日夜医療や看護、後方支援に当たった当院の職員全員に敬意を表するとともに、外出、外泊や面会の制限に理解を示し、辛抱強くご協力いただいた患者さんやご家族にこころから感謝を申し上げます。
さて、わが国の精神科医療について、入院中心から地域生活中心への基本的構想の転換(パラダイム・シフト)が叫ばれています。この実現には患者さん一人一人の病状や意向を評価・尊重しながら進める必要があり、とりわけ長期在院者の地域移行には多くの時間と労力を要します。残念ながら、退院と地域生活定着に向けた精神科病院の取り組みに対するわが国の診療報酬上の評価はまだ不十分と言わざるを得ません。また、受け皿となる地域においても、共生社会の実現に向けた取り組みが不可欠です。東京都江戸川区では、2021年に「ともに生きるまちを目指す条例」が制定されています。少子高齢化が急速に進む地方においてはなおさら、年齢、性別、職業、価値観、障害の有無など、さまざまな“ちがい”を超えて交流し支え合うまちづくりが喫緊の課題と考えます。
当院は、令和5年度のビジョンとして、「大切な人を信頼して託すことのできる病院」を掲げています。この目標の実現には、患者さんを中心に、職員全員が日々の活動の中で自由闊達に考えを交わし、目標を共有して協働することが原動力となると確信しています。これからも当院の取り組みにご理解とご支援を賜りたいと願っています。
理念
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患者さまの権利擁護に関する宣言(アドボカシー・ポリシー)
当院は、個人の経済・社会・文化・市民・政治的諸権利が
人間の固有の尊厳に由来することを認め、
これらの奪い得ない権利を尊重することが医療の基礎をなすことを考慮し、
患者さまの個人としての尊厳及び権利を擁護することをここに宣言します。
人間の固有の尊厳に由来することを認め、
これらの奪い得ない権利を尊重することが医療の基礎をなすことを考慮し、
患者さまの個人としての尊厳及び権利を擁護することをここに宣言します。
- 患者さまは、固有の尊厳を享有し、公共の福祉に反しない限り、前文に掲げる諸権利を享受します。医療を受けるに当たっては、精神保健福祉法等法令による適正な手続きを経なければ、これらの権利を制限されることはありません。
- 患者さまは、自己の受ける医療について知る権利、説明を求める権利を有します。その上で、治療方法を選択し、治療に同意する権利があります。
- 患者さまのプライバシーは、公共の福祉に反しない限り、尊重され、保護されます。
- 患者さまは、治療に協力する義務があり、当院はその義務が果せるよう良好な信頼関係を構築して援助する責務を負います。